資金調達率アービトラージとは — 仕組みと、費用を引いた後に残るかの見方
資金調達率アービトラージ(ファンディングレート・アービトラージ、英語では Funding Rate Arbitrage)とは、同じ銘柄を2つの取引所で売りと買いに分けて同時に持ち、値動きを打ち消したうえで、資金調達率の差だけを受け取る組み方です。価格が上がっても下がっても片方の損がもう片方の利益で打ち消されるため、手元には受け払いの差額だけが残ります。
当サイトは、この組み合わせ(両建て・デルタニュートラル、通称デルニュ)を Binance・Bybit・OKX・Hyperliquid など 49 の取引所のあいだで、BTC・ETH・SOL などの主要銘柄から小型銘柄まで探して、売り買いの費用を引いた後の手取りの大きい順に並べています。いまの一覧を見る。
計算の式と例
資金調達率アービトラージの受け取りは、2つの取引所の率をそれぞれ1日あたりに直した差に、片側の額を掛けたものです。例として、元手 $20,000 を2つの取引所に半分ずつ置き(片側 $10,000・倍率1倍)、売る側の率が 8時間ごと 0.0300%、買う側が 8時間ごと 0.0100%(どちらも1日3回)、建てて閉じる費用が片側 0.12%、30日持った場合を計算します。
- 1日の受け取り
- 片側の額 ×(売る側の率 × 1日の回数 − 買う側の率 × 1日の回数)
$10,000 × (0.0300% × 3 − 0.0100% × 3) = $6.00 - 保有期間の受け取り
- 1日の受け取り × 保有日数
$6.00 × 30 = $180.00 - 建てて閉じる費用
- 片側の額 ×(売る側の費用 + 買う側の費用)
$10,000 × (0.12% + 0.12%) = $24.00 - 手取り
- 受け取り − 費用
$180.00 − $24.00 = $156.00 - 年率(受け取りだけ・単利)
- 1日の受け取り × 365 ÷ 元手
$6.00 × 365 ÷ $20,000 = 10.95% - 手取りの年率(費用込み)
- 手取り ÷ 元手 × 365 ÷ 保有日数
$156.00 ÷ $20,000 × 365 ÷ 30 = 9.49% - 費用の回収日数
- 費用 ÷ 1日の受け取り
$24.00 ÷ $6.00 = 4.0 日
数字は計算の仕組みを示すための例で、いまの率ではありません。率は受け渡しのたびに変わるので、これは掛け算で、予測ではありません。いまの率で計算する。
なぜ取引所ごとに率が違うのか
暗号資産(仮想通貨)の無期限先物には満期がありません。満期が無いと、先物の値段が現物から離れたままになり得ます。そこで買っている人と売っている人のあいだで定期的にお金を受け渡し、離れた側に不利を付けて引き戻します。これが資金調達(ファンディング)です。
この率は取引所ごとに別々に決まります。同じ銘柄でも、その取引所で買いが多ければ率は高く、売りが多ければ低くなります。同じ時刻・同じ銘柄でも取引所によって率が違うのは、この決まり方のためです。差が生まれるので、高いほうで売り、低いほうで買えば、値動きに関係なく差額が受け取れます。
受け渡しの間隔も取引所によって違います(8時間ごと・4時間ごと・1時間ごとなど)。当サイトは間隔を揃えて比べています。言葉の意味はこちら · そろえ方と年率の出し方。
差があれば必ず儲かるわけではありません
率の差がそのまま手元に残るわけではありません。建てるときと閉じるときに費用がかかります(取引所の手数料、買値と売値の開き、急いで注文したときに不利な値段で約定する分)。受け取れる差額がこの費用を上回って初めて、残ります。
当サイトが並べているのは、この費用を引いた後の手取りです。率の差だけを見て並べると、費用で消える組み合わせが上位に来てしまいます。
- 率はいつでも変わります — 今の差が明日も続く保証はありません。
- 2つの取引所に資金を分けて置く必要があります — 片方の含み益で、もう片方の証拠金不足をその場で埋めることはできません。
- 片方が強制決済されると、打ち消し合っていない片側だけが残ります。
似た形の呼び名 — キャッシュアンドキャリー、ベーシス取引、現物+先物
値動きを打ち消したうえで受け取りだけを取る形には、いくつかの呼び名があります。違うのは何で打ち消すかと受け取りの出どころの2点だけで、考え方は同じです。
- 先物どうし(このページの形) — 同じ銘柄を2つの取引所で売りと買いに分けます。打ち消す相手はもう一方の取引所の先物で、受け取りは資金調達率の取引所ごとの差だけです。注目ペア と 継続キャリー に出しています。
- 現物+先物(キャッシュアンドキャリー、現物先物) — 現物を買って、同じ銘柄の先物を売ります。打ち消す相手は自分が買った現物です。現物と先物の値段の差を ベーシス といい、この差を取る形なので ベーシス取引(ベーシストレード) とも呼ばれます。
- 利回りを先物売りで守る形(先物ヘッジ) — 現物を貸暗号資産(レンディング)やステーキングに回して利息を受け取り、同じ数量の先物を売って値動きを打ち消します。受け取りは現物側の利率と先物側の資金調達を足したものです。利回りヘッジ に出しています。
満期のある先物なら、現物との値段の差は満期に向けて縮んでいきます。無期限先物には満期がありません。そのかわりに置かれているのが資金調達の受け渡しで、当サイトが並べているのはこちらです。
どの形も ノーリスク ではありません。打ち消しているのは値動きだけで、片方が強制決済されること・率の差が逆転すること・費用が受け取りを上回ることは残ります。
どこで見るのか
- 注目ペア — いま費用を引いても残る組み合わせを、手取り順に。
- 継続キャリー — 数日から数週間持ち続ける前提の一覧。
- 利回りヘッジ — 現物を買って利息を受け取り、先物を売って値動きを打ち消す形。
- 言葉の意味と数字の読み方 — 画面に出ている用語の定義。
- やり方と手順 — 実際にどういう順で手を動かすか。
- ファンディングレート計算 — 元手・率・日数・倍率を入れて、手取りと年率を計算する。
当サイトは公開データの閲覧用で、投資助言ではありません。発注機能はなく、口座にも API キーにも接続せず、口座開設の取次ぎもしません。免責事項 · carryroom とは。
ぜんたいの流れ(4段)
- 1. 2つの取引所に資金を置く 片方に寄せては置けません。片方の含み益で、もう片方の不足を埋めることもできません。
- 2. 高いほうで売り、低いほうで買う 同じ銘柄・同じ金額・同時に。資金調達が高いほうの取引所で売ります。
- 3. 持って受け取る 値動きは2つの側で打ち消し合い、資金調達の差だけが残ります。
- 4. 両側を同時に閉じる 片方だけ残すと、値動きに賭けているのと同じ状態になります。
費用がかかるのは 1 と 4(建てるときと閉じるとき)です。当サイトが並べているのは、それを引いた後の手取りです。
よくある質問
なぜ2つの取引所が要るのですか。1つの取引所で買いと売りを両方持てば同じことになりませんか?
いいえ、1つの取引所の中で買いと売りを両方持っても、資金調達率の差は生まれません。
同じ取引所の同じ銘柄には資金調達率が1つしかなく、売り側が受け取れば買い側が同じだけ払うので、両方持つと相殺されます。率は取引所ごとに別々に決まるため、差は率の違う2つの取引所の間にしかありません。売り側と買い側の取り分が別々に決まり、両側とも払いになる取引所もありますが、その場合も同じ取引所の中に差は生まれません。
どの取引所を比べているのですか。取引所の名前は分かりますか?
当サイトは 49 か所の取引所を比べていて、名前は「言葉の意味と数字の読み方」の「取引所の種類」に並べています。
49 は画面に出している取引所の一覧から自動で数えているので、取引所が増減すればこの数字も変わります。一覧は次の3つに分け、それぞれ何か所かの数と一緒に並べています。
- 分散型(DEX)
- 中央集権型(CEX)
- 中間型 — DEX と CEX の両方の性質。決済はブロックチェーン上なのに口座開設が要る、登録の仕方によって鍵の持ち主が変わるなど、どちらにも寄せられない取引所
建ててすぐ閉じても差額は取れますか。どのくらい持つ前提の話ですか?
すぐ閉じても資金調達の差額は取れますが、短く閉じるほど費用に負けて不利になります。
受け取りは受け渡しのたびに少しずつ積み上がるのに対し、費用は建てるときと閉じるときに一度きりでまとまってかかるためです。当サイトの「継続キャリー」は数日から数週間持ち続ける前提の一覧で、1回の往復の費用を保有期間で回収できるかを見ています。何日で回収できるかは行ごとに「コスト回収」の列に出しています(組ごとに違い、率が動けば変わるので、目安の日数ではなくその列を見てください)。
片方の取引所がその銘柄の取り扱いをやめたり、サービスを終えたらどうなりますか?
片方が無くなると、残った側は値動きをそのまま受ける、打ち消しのない持ち高になります。
値動きの打ち消しは両側を同時に持ち続けているあいだだけ成り立つので、片方が強制決済されて片側だけ残るのと同じ形です。
- 当サイトには、サービス終了が公表された取引所を一覧から外した例があります(往復の費用を回収し終える前に片方が消えるため)。
- 予告なく起きる取り扱い停止までは先回りできません。
取引所ごとにファンディングレート(資金調達率)が違うのは、なぜですか
取引所ごとに、自分のところの値段から、自分のところの間隔で、自分の決め方で決めているからです。
無期限先物には満期が無いので、取引所は数時間ごとに片側から片側へ払わせて、自分のところの値段を現物に近づけます。その値段も、買いと売りのどちらに偏っているかも取引所ごとに違うので、同じ銘柄でも率は揃いません。受け渡しの間隔も違うため、当サイトは比べる前に、どの率も8時間あたりに直しています(それぞれの間隔はペアの詳細画面に出しています)。
- 値段の開きが違う:買いに偏っている取引所ほど、買っている側の払いが大きくなります。
- 間隔が違う:「1時間ごとに0.01%」は「8時間ごとに0.01%」の8倍です。
- 決め方が違う:買う側と売る側の取り分を別々に決める取引所があり、両側とも払いになることがあります。
資金調達率が高い取引所で売り、低い取引所で買うと、何が残りますか
2つの率の差から、建てて閉じる費用を引いたものです。それ以外は残りません。
値動きは2つの側で打ち消し合うので、受け取りにはなりません。差は受け渡しのたびに少しずつ入るのに対し、費用は建てるときと閉じるときに一度きりでまとまってかかるため、短く閉じるほど不利になります。そして「高いほう」は、今この瞬間の話です。率は数時間ごとに決まり直し、どちらが高いかが入れ替わることもあるので、直近の実績と今の率が食い違う行には印を付けています。
- 残るもの:2つの取引所の率の差を、受け渡し1回ぶんずつ。
- 引かれるもの:2つの取引所それぞれの、建てと閉じの、手数料・買値と売値の開き・約定するときの値段のずれ。
- 残らないもの:値動き。ただし打ち消しが成り立つのは、両側を同時に持っているあいだだけです。
両建てにすれば、価格変動のリスクは無くなりますか(ノーリスクですか)
いいえ。打ち消されるのは値動きだけで、しかも両側を同時に持ち続けているあいだだけです。
2つの側は2つの取引所にあるので、証拠金は分かれています。勝っている側に積み上がっている利益で、その場で負けている側を救うことはできず、資金を移すには半日ほどかかります。一覧の「強制決済されない倍率の上限」は、まさにこの前提の数字で、直近30日のどこか12時間で起きた最悪の逆行に、それぞれの側が単独で耐えられたかを見ています。片側が飛べば、残った側は値動きをそのまま受けます。当サイトは投資助言ではなく、何を持つべきかは書きません。
- 片側が消えること:強制決済、その銘柄の取り扱いの終了、取引所のサービス終了。
- 受け取れる差が縮むこと、向きが逆になること。
- 2つの注文は同時には約定しないので、片側だけになる時間が必ずできること。
- 建てて閉じる費用はどちらに転んでもかかり、税金は当サイトのどの数字にも入っていないこと。
資金調達率がマイナスになっているのは、なぜですか
その取引所で、先物が現物より安く付いているからです。向きが逆になり、売っている側が払って、買っている側が受け取ります。
資金調達は、先物の値段を現物へ引き戻すためのものです。ですからプラスかマイナスかは、そのずれがどちら向きかで決まり、数時間ごとに決まり直します。2つの取引所を組む形では、片方がマイナスであること自体は問題ではありません。受け取るのは差なので、片方で払っても、もう片方の受け取りのほうが大きければ残ります。当サイトの数字は、その差し引きのあとの額です。
- プラス:買っている側が払い、売っている側が受け取ります。
- マイナス:売っている側が払い、買っている側が受け取ります(逆ざやと呼ばれる状態です)。
- どちらが高いかは時間とともに入れ替わることがあり、だから一覧は、直近の実績と今の率が食い違う行に印を付けています。
資金調達アービトラージには、どんな手法がありますか。この画面が並べているのはどれですか
この画面が並べているのは取引所をまたぐ形の裁定だけです。同じ銘柄・両側とも先物・2つの取引所、という組み合わせです。
他の形を載せていないのは、効くかどうかではなく、確かめられるかどうかの理由です。現物の側が入る形は、取引所が借入金利と借入枠を公開していないと数字が正直になりません。オプションが入る形は、行使価格と満期で動くプレミアムが要り、数字の形そのものが変わります。
- 取引所をまたぐ形(ここに載せているもの): 両側とも先物、2つの取引所
- 現物と先物: 現物を買って先物を売る。借りる側が公開されている必要があります
- 同じ取引所で満期違い: 両脚とも板が厚い期限つき契約が要ります